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清水正『宮沢賢治の神秘的世界―「風の又三郎」と「よだかの星」をめぐって』鳥影社、9012月、22cm206

 第一部「風の又三郎をめぐって、第二部「よだかの星」をめぐって―鷹もどきから夜の鷹へ向けて―、から成る。

 第一部では、風の力による“世界の消滅と新たなる世界の創出”を明らかにすることをライトモチーフに、キリスト教とも関連づけながら、「風の又三郎」を賢治なりの“創世紀”として読み解く。“身ひとつ、心ひとつで賢治の「風の又三郎」の世界に入っていこう”という著者の“想像的批評”が展開されており、ドストエフスキーの援用、「銀河鉄道の夜」との比較、空間論的分析、数字表現の象徴性についての指摘、著者の体験からの着眼など、視点、方法は多岐にわたっている。

 第二部では、ビンスワンガー、ドストエフスキーを援用しつつ、よだかの“欺瞞”と鷹の“寛大さ”を指摘、この二者を対比させて論じ、よだかが自己内部の“夜”=“鷹になりかわろうとする野望”を隠蔽し、共同世界を捨てることで、“単独者の王であることを意志”する物語=「よだかの星」と捉える。(安藤)

作品索引:「風の又三郎」「銀河鉄道の夜」「よだかの星」

事項索引:異界、異人、風、キリスト教、境界、シャーマニズム