1-110

杉浦静「いざうましめずよみがへらせよ―宮沢賢治「「東京」ノート」の〈自然〉―」大妻国文、第21号、大妻女子大学国文学会、90年3月、149170

 昭和三年の八回目の上京経験から生まれた「「東京」ノート」を中心に、賢治に於ける「東京」観を「自然」との対置によって読み取ろうとした論である。まず「高架線」と「〔澱った光の澱の底〕」を分析し、両者に〈病める都会〉対、農耕との関わりをその中心に含む〈健康な自然〉という構図が共通にあると指摘。次に東京に言及した『春と修羅』所収の「宗教風の恋」と「昴」を分析して、大正十年の滞京生活によって、岩手の〈風土〉の再発見があったと指摘、「心象スケッチ 林中乱思」では小沢俊郎の「都会への傾斜、中央へのコンプレックス」という指摘に対し、むしろ「岩手における農耕生活の中で、東京に存在しない」「新しい美を発見しているという自負が語られている」と新しい読みを提示する。この他「農民芸術概論綱要」等にもふれ、補説では「「東京」ノート」の成立について検討する。(大塚)

作品索引:「〔澱った光の澱の底〕」、「東京」ノート、「高架線」「宗教風の恋」「昴」「心象スケッチ 林中乱思」

事項索引:大島、自然、東京、風土、文明