1-120

多田幸正「「グスコーブドリの伝記」論―ネネム・ブドリ・賢治―」湖北紀要、第11号、湖北短期大学紀要委員会、90年3月、1―14

 「グスコーブドリの伝記」とその先駆形「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」をまったく別の物語とせず、作者賢治の体験の時間的連続性の中で捉えようとする。すなわち「ネネムの伝記」には大正十年の上京体験が、「グスコーブドリの伝記」には帰郷後の農学校教師、羅須地人協会の実践活動を経た農村体験が、それぞれ一つながりの体験として作品に投影されている、と論ずる。特に「ネネムの伝記」を賢治の文学的野心・名声欲の戯画化とし、「グスコーブドリの伝記」を法華経「薬王菩薩本事品」の喜見菩薩の故事と結びつけ「ネネムの伝記」に見られる欲望・慢心を否定する作と位置付けている。また、賢治の大正十二年の上京・原稿売り込みとの関連で「ネネムの伝記」の成立を大正十二年一月以降と推定している。(安藤)

作品索引:「グスコーブドリの伝記」「〔ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記〕」

事項索引:気象学、法華経