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對馬美香「宮沢賢治・「疾中」詩篇の総括的研究」弘前・宮沢賢治研究会誌、第7号、弘前・宮沢賢治研究会、9012月、167211

 〈疾中〉研究の現状を整理した上で、従来異説の多い〈疾中〉の創作時期を、昭和三年八月から五年までと改めて特定し、〈疾中〉が、当初『春と修羅』第三集に続く第四集に挿入されるものとして構想されたが、後に第三集に吸収され、その「“章化”」を試みられた唯一の作品群であり、「脱心象スケッチ」即ち「“詩化”」を目指した最初の試みであったとの新見を示した。次いで〈疾中〉中の各詩篇を検討して、「法」の信仰、〈春と修羅〉的自然観の動揺をテーマとすることを確認するとともに、その契機となった病と、信仰の関連について考察して、〈疾中〉の創作に、詩型の模索と「個我の問題」の「決着・決定」の実験的意図があったことをあぶり出した。さらに、〈疾中〉をはさんでの、「グスコーブドリの伝記」「銀河鉄道の夜」の変質や、「虔十公園林」の虔十と「グスコーブドリの伝記」のブドリの相違を検討、〈疾中〉後には“法”の表現化、積極的生への姿勢が明確化したことを確認し、〈疾中〉以後の〈文語詩〉は「“私”」脱却の意図にそいながら、「“無私”の視点」獲得の営みであり、「叙事」の方向の模索であったことを主張している。(杉浦)

作品索引:「銀河鉄道の夜」「グスコーブドリの伝記」「虔十公園林」「疾中」「病床」「眼にて云ふ」「〔その恐ろしい黒雲が〕」「〔丁丁丁丁丁〕」「〔風がおもてで呼んでゐる〕」「〔胸はいま〕」「(一九二九年二月)」「廃坑」

事項索引:風、業、自然観、詩法メモ、心象スケッチ、身体、短篇梗概、デクノボー、熱、文語詩