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中野新治「「ポラーノの広場」論―夢想者のゆくえ―」日本近代文学、第42号、日本近代文学会、90年5月、1224

 「登場人物と共に物語の中の幻想と現実の狭間を辿りつつ、賢治のおけるユートピア不成立のゆえん」を探ることをモチーフとする。農村での実践活動を契機とした「ポランの広場」から「ポラーノの広場」への改稿により、〈ポラーノの広場〉は、「夢幻的解放の場」から「社会的解放の場」へと変容するのだが、その「設計図」は、「貧弱なものに収束されねばならなかったとする」。中心人物たるキュースト像を読み解きながら、ユートピア不成立の本質的要因が、賢治自身の実践活動の挫折のみでなく、賢治の、社会的「現在」に対しては関心が薄弱であるが「あらゆる存在のもっとも純粋な生の手ざわり」には触れている「夢想者」性と、社会的自己定立が困難である過剰な想像力=「察知の能力」にあったと論じている。(杉浦)

作品索引:「ポラーノの広場」「〔ポランの広場〕」

事項索引:童話、夢想者