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別役実『イーハトーボゆき軽便鉄道』リブロポート、90年1月、22cm264

 中心は「銀河鉄道の夜」に於ける、父的、母的、子供的なるものによる分析であるが、多くの短篇作品も扱っている。例えば、「どんぐりと山猫」では、出頭(呼び出し)のハガキをめぐる山猫と馬車別当との意見対立を想定し、山猫の屈辱を読みとり、「セロ弾きのゴーシュ」では空白の六日間が、最初の四日間の出来事に気づかないゴーシュの純粋さの説明の為にあったと読み、「やまなし」では失われた十枚(十ヶ月)の幻燈を問題化し、「洞熊学校を卒業した三人」では、無心の存在としての蜂の群れに着眼し、「猫の事務所」では、賢治の第六事務所という取るにたらないものへの愛着を読み、「水仙月の四日」では、雪童子がかつて雪婆んごに命をとられ子供達であるという読みから、雪童子が子供を救う意味にせまり、「双子の星」では、すべてを「ご存じ」の王様と、「見つかったら大変」な王様との違いを軸に読み、「貝の火」では生命救済行為のグロテスクさを指摘し、「烏の北斗七星」では空のひびきをめぐるシュールな幻想を、生態系の因果律から脱出に不可避な不条理を示すとする。(大塚)

作品索引:「貝の火」「風の又三郎」「銀河鉄道の夜」「グスコーブドリの伝記」「セロ弾きのゴーシュ」「どんぐりと山猫」「水仙月の四日」「ポラーノの広場」「やまなし」

事項索引:イーハトヴ、童話