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天沢退二郎「賢治童話における伝承の力学」日本児童文学、第36巻2号、教育出版センター、90年2月、6977

 賢治文学を産み出した想像力のバックグラウンドに様々な意味でのパラドックスをはらむ伝承の側面があるとして、賢治作品を分析する。まず「ざしき童子のはなし」と佐々木喜善や「遠野物語」の関連性にふれ、次に「水仙月の四日」に於ける岩手の昔話の「雪ばさま」の「雪婆んご」への変更、「風の又三郎」に於ける「風の三郎」伝承から「又三郎」への変更等に着目し、伝承的な存在を自分の創作世界の背景へおし戻したと指摘。「どんぐりと山猫」「風の又三郎」では「儀式」を問題にし、山猫とどんぐりの間で毎年くり返された「儀式」としての裁判に決着をつけたために一郎を再び呼ぶ根拠がなくなったという新しい読みも出す。(大塚)

作品索引:「風の又三郎」「グスコーブドリの伝記」「どんぐりと山猫」

事項索引:風、伝承、「ヘンゼルとグレーテル」、柳田国男、雪