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安藤恭子「〈悲哀〉の逆説―宮沢賢治とメーテルリンク―」『安川定男先生古稀記念 近代文学の諸相』明治書院、90年3月、268286

 本論文の意図する〈悲哀〉の逆説とは、「既成概念という錯覚から目覚め、世界自身を据えかえすこと」「どうしてもこんなことがあるやうでしかたないといふこと」を「そのとほり」書いたという、意識的作為を廃した「わたくし」の位置づけ、それ故に「わけのわからない」ことが糧となる。すなわち「未知」こそ「新しい、よりよい」ものを招来する知慧の源泉である―という〈逆説〉をメーテルリンクと相対させ、〈悲哀〉から逃れずしかも〈悲哀〉を〈悲哀〉のままでとどめず、厭世へも通ずる〈悲哀〉が新しい、よりよい、「種子」になる、ということなのであり、これが「罪や、かなしみが聖くきれいにかゞやいてゐる」世界=童話集『注文の多い料理店』の〈逆説〉の世界なのだ、ということである。(萩原)

作品索引:『注文の多い料理店』

事項索引:悲哀、文学、メーテルリンク