1-71

岡井隆『文語詩人 宮沢賢治』筑摩書房、90年4月、20cm235

 賢治の文語作品(短歌・文語詩)の解釈と評価を、吉本隆明、小沢俊郎らの諸論文も視野に入れつつ、明治・大正期における短歌・文語詩の系譜の中で見定めようとしたもの。著者自身、賢治の短歌や文語詩に対する評価の揺れを告白しているが、短歌に関しては大よそ否定的で「ついに模索の域を出なかった」「賢治の試行は、むしろ、短歌そのものの美質を破棄する方向に歩み出している」とする。文語詩に関しては、「精神にこのような何重かの〈限定〉〔行数・文語・音数律等〕を加えることによって、自らの中の未知の部分を、水面まで、もってこようとする試行であった」と、その独自性を評価。しかし、その試行は「とば口」「手さぐりの段階」にとどまっており、「成熟にはほど遠かった」とする。(鈴木)

事項索引:短歌、文語詩