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亀井志乃「〈風の又三郎〉とは誰だったのか―異界との交錯―」藤女子大学国文学雑誌、第44号、藤女子大学/藤女子短期大学国語国文学会、90年3月、4567

 構成と人物形象とその関係を追いつつ、作品の理念のありかを民俗学の視点や制度論を使って論じた「風の又三郎」論。冒頭の歌に着目しては「近代的・中立的視点」から「伝統的な民俗意識」を逆転させる「仕掛け」だといい、子どもたちを通して「教育の姿をとった近代」や「近代制度」と「〈ムラ〉社会」との関係を描いたとする。三郎は「ロシアの血筋」の母との混血、つまり「異族」で、やがて彼に「風の神(精霊)である又三郎が悪」き、九月八日に「不意に〈他界からの声〉によって」それを悟らせられるという二重性が背負わせられていたという。末尾の一郎の態度に「近代理念に史実」でありながら「共同体の〈内なる異族〉」となる者の「悲劇」を予見して結ぶ。(栗原)

作品索引:「風の又三郎」

事項索引:共同体、近代、禁忌