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倉橋健一「二度生まれの子 宮沢賢治「無声慟哭」ノート」銀河系つうしん、第11号、黎明舎、9010月、2027

 「無声慟哭」三部作は、詩が「逆に現場を誘い出す」方法で書かれていると言う。「永訣の朝」は「トシの死によって失われた現実の生の場における一体感」の「再生」を求めて、「現場を再構成させることが可能なように歌った」もの。その「一体感の内部で」「無声慟哭」での「信念の達成」としてのトシの死とそれを「未知なるもの」とする取り残された賢治との間に「聖と俗」の「引き裂かれ」が生じてくる。つづく「風林」「白い鳥」の成立の理由、前提にある「小岩井農場」の倫理的決意の問題、トシの官能の対象としての可能性と賢治の禁欲と自己犠牲の関係などを、ウイリアム・ジェイムズの「二度生まれの子」という概念に重ねて論じ、挽歌、「手紙 四」に示される「贖罪に近い意識」と「宗教的情操」の関連を展望する。(栗原)

作品索引:「〔手紙 四〕」「小岩井農場」「無声慟哭」「永訣の朝」

事項索引:官能、禁欲、宮沢トシ