2-107

島村輝「宮沢賢治『谷』」国文学解釈と鑑賞、第564号、至文堂、914月、113118

 賢治童話は演劇的パフォーマンスとしての“語り”の行為と密接に結びついている、と述べる論者は、主体の分化・分裂など多様な貌を担いつつ、それらを統合する〈場〉="語り"のダイナミズムを孕んだ作と思われる「谷」を考察。〈日常世界〉―〈境界〉―〈異界〉の三つの空間が、空間を生きる主体によって変貌するという空間分析をふまえつつ、「谷」の"語り〃には空間の変貌の追体験を促す効果がある、とする。そして、「谷」の"語り"が、子供時代の体験を整理して語っているように見えながら、大人になった今も消し去りがたい生々しい記憶となって保持されていることを示すべく周到に構築されたものである、と結論づける。(安藤)

作品索引:「谷」