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山内修『宮沢賢治研究ノート 受苦と祈り』河出書房新社、919月、286頁、20p

 著者が長年にわたって発表し続けてきた賢治論をまとめた総合的な賢治論。賢治童話の一貫したモチーフを受苦(パトス)の克服と捉え、「よだかの星」に見られるように、「自分が存在することによって、この世に悪を生み出」さざるを得ない「生からの離脱」願望に対して賢治の示した結論は「祈りの真撃さ」だけであるといい、また「なめとこ山の熊」にみられるように「受苦が関係の別名であるとするならぱ、自己の受苦はまた他者の受苦である」と賢治のモチーフが展開したと捉え、つまりは「受苦―祈り―死―解放という図式が賢治の童話の根源にある構造である」と結論づける。

 また賢治の詩作品に見られる自然へののめり込みを「関係の不在」と捉えて「結局、関係からの限りない遠ざかり、自然に同化しようとして行き着いた先は、自然のまったく欠如した仮構の世界であった」とする。こうした立場から賢治の青春からその死まで、重要作品の読みとからませつつ賢治のおかれた状況を詳細に分析してみせる。(大塚)

作品索引:〔雨ニモマケズ〕「なめとこ山の熊」『春と修羅』「よだかの星」

事項索引:自然、修羅、存在悪