イーハトーブ館企画展示11

宮沢賢治・植物の世界展

 
1998年3月2日〜6月30日
ごあいさつ
企画監修:桜田 恒夫
主催
宮沢賢治イーハトープ館
宮沢賢治学会イーハトーブセンター
協力
岩手日報社/宮沢賢治記念館

 本展は、平成8年、宮沢賢治生誕百年の記念行事の一端として岩手日報紙上に、平成8年1月1日から翌9年2月まで、「賢治のイーハトーブ植物園」として連載した内容である。此の企画は植物の解説を通して、賢治文学の理解と普及を意図したものである。賢治作品には約400種ほどの植物が登場する。キャベツ、大豆などおよそ詩や文学に無縁と思われるような植物も登場し、賢治独特の心象の世界を展開している。

 約4億年前は高さ40メートルを越す巨大シダ類の鱗木(りんぼく)から、4億年後の今は、細々と地をはうヒカゲノカズラの蔓で杭穴に落ちた蛙を救う童話。チュウリツアの花の杯で光の酒を飲む化学題材の童話。一転して、「銀河鉄道の夜」の天の川の岸辺のカンラン樹の森に孔雀を住まわせると言った変幻自在な賢治心象の世界を約400種の植物に託して紹介する。

  1. 「あけびのつるはくもにからまり…いかりのにがさまた青さ四月の気層のひかりの底を睡(つばき)しはぎしりゆききするおれはひとりの修羅なのだ」とアケビのつるを伝って心象の世界に入り込む。
  2. 「あの(コブシの)花びらは天の山羊の乳よりしめやかです」と美しい心象の世界から、「マグノリアは寂静です」と一転してマグノリアで宗教の世界を展開したりする。
  3. 「光が湧いている、(ワイングラスの様な)花の盃をあふれて青ぞらも光の波で一ぱいです」「チュウリップの光の酒です。どうです」と化学の世界をチュウリップを材料に心象童話を展開してみせる等々。

 今回は一般的な植物の多様な表現のみだが、以降の展示企画では、テーマ別に、7タイプの各表現例展。当時の世界の文学思潮だった「意識の流れ」関連の表現例を交える等、賢治植物の世界の全容に迫りたいと考えており、山野の植物深訪同様に、賢治心象の世界の植物散策への誘いになればと願っている。ご協力いただいた各位に感謝を申し上げ、ご挨拶とする。