イーハトーブ館企画展示14

宮沢賢治 植物・語彙の世界 

 
2000年1月5日〜5月31日
ごあいさつ
企画監修:桜田 恒夫
主催
宮沢賢治イーハトープ館
宮沢賢治学会イーハトーブセンター

 この企画展示の第2回は賢治植物の世界と、賢治心象の世界でした。従って、心象の世界の種々相として、心象と、「意識の流れ(Stream of consciousness)」の関連に踏み込んだ解説となった。

 賢治植物の表現内容が、従来植物の種々相として、心象内答、宗教関連、科学世界関連、植物の美しさ、擬人的内容、情景要素、植物造語、その他の8項目にまとめて解説していたが、今回は心象内答、宗教関連、情景要素など5項目にしぼって記載しました。この企画では植物の世界の他に、新たに賢治語彙の世界を取り上げました。

 賢治は「春と修羅」の出版にあたって、「これは詩集ではないんだ」、「心象スケッチ」なんだと強く主張された事は皆様ご存じの通りです。

 ではこの、従来の詩とは全く異なる表現内容は、どんな形(文体)でどんな語句で述べられているのか、幾つかの語彙を通じて足跡をたどって見ましょう。

 難解をもってなる、春と修羅の序文、「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です/(中略)明滅しながら/(略)ともりつづける/因果交流電燈の/ひとつの青い照明です」

 この冒頭の、「私と言う現象は」、普通の考えでは、私(人間)は現象などでは無く、厳然たる存在です。このように、一体どのような考え(論理の根拠)からの用語や表現でありましょうか。これが解ければ、有横交流竜燈も因果交流電燈も解決しそうである。賢治の考えの原理や根拠不明では、意図もこの文意も不明のままで、賢治作品は難解だとの印象が読者の心の中に残る事でありましょう。

 今回の賢治語彙の特集は、まず、異質、独特な、詩や童話の題名と、作中の異質な、用語、表現をまとめて白日のもとにさらけ出して、その特徴、表現の根拠を探し出す鍵としての役割の用語表を作って見る事にあります。

 まず、作品の異質題名の一監表からそのを異質さをご覧下さい。この冊子に主な題名を掲載し、(宗教)、(岩石)、(星座)、などの分野を示し種々相の輪郭を示し、下記のように特異題名の若干の意味を解説しております。

  1. 作品の異質題名:真空溶媒、鉱染とネクタイ(岩石、鉱物内部に色々な沈積す模様をネクタイの生地の模様とした内答)、蠕虫舞手(ぼうふらの動作、運動をダンスとして、蠕虫動物の学名と舞をドイツ語のタンツエリーンとしたものです)。

     インドラの綱は、宗教由来の語と言うより、仏教で言う、帝釈天の住む宮殿を覆う網。「奏鳴的説明」は一個の腎治道語で、広漠たる曠野での風と光りの織り蔵す幻灯模様と言うか心象風景、と言ったような千差万別な情景です。

  2. 文中の異質表現語:寂静(じゃくじょう、宗教。悟りの世界)。雲翁(うんおう、心象、雲の湧き上がる様子、雲かげ)。盈虚(えいきょ、心象、盈(みちる)、虚(かける))。狷介(けんかい、難解、がんこ)。還照(心象世界)、昧爽(まいそう、心象、明け方)。プラジオ(斜長石、童話で擬人化、医者役)。カシオピア(星)と言った多様な内容

  3. 人間は勿論、植物、動物、その他の生物が擬人的役割で、詩や童話の役割を演じ、星、岩石のような無生物までも、擬人化され、童話や詩の重要な役割を演じています。

  4. ひらがな、カタカナ文章の中で、娼介、刻鏤、清列、瞼峻、などの独特難解な用語や、星、岩組、蛇絞岩、石英などの鉱物は、ある時は堅さ、きらめきの文章となり、ある時は、このような用語、物質、光り、風などの現象が織物の模様のような役割を文章の中で演じ、宗教、科学の織りなす雄大な詩、童話の内容となる。宗教用語の混在も地面以上の深遠さを付加し、単純な筋の童話などが意外に重厚深遠な童話の様相を帯び、読む人に多様な感触を与える。

 ほんの一部少数の特異用語の例でも、単純にまとめるとこのような内容になるのでありましょうが、膨大な賢治の独特な特異語彙を表現例ごとに集大成したら、賢治が心象スケッチなんだ、単なる詩では無いんだと叫んだ難解な詩も文もその意図された内容があぶり出されるのではとの思いで、腎治語彙を寸描したもので、単なる特異語彙、難解語句の解説を意図したものではありません。取り敢えずは、どんな難解用語、特異語句、表現があるのか皆様を、心象世界への入り口の鍵として用意したものです。末尾に、(心象)、(岩石)(宗教)などと、分野別と(2−41)などのその用語の例文の巻、頁を示しましたので、皆様で、その文章を散策され、ご自分でじっくり味わい、自分自身の心象世界を描いて賢治を追慕しては如何でしょうか。