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宮沢賢治賞・イーハトーブ賞

宮沢賢治賞・イーハトーブ賞の贈呈式が行われました

 

 2021年11月21日に、花巻市の「花巻温泉ホテル紅葉館」において、第31回宮沢賢治賞およびイーハトーブ賞の贈呈式が、行われました。
 本年の受賞者は、宮沢賢治賞が信時哲郎さん、イーハトーブ賞が毛利衛さん、イーハトーブ賞奨励賞が ものがたりグループ☆ポランの会 の方々です。

 例年は本贈呈式は、宮沢賢治学会イーハトーブセンター通常総会と同じ9月22日に行われますが、昨年に続いて本年も、新型コロナウイルス感染予防のため、参加人数を制限した形で開催されました。

宮沢賢治賞・イーハトーブ賞 贈呈式次第

一、開式

一、選考経過報告

宮沢賢治学会イーハトーブセンター賞選考委員長 大沢 正善

一、賞贈呈

一、あいさつ

花巻市長 上田 東一
宮沢賢治学会イーハトーブセンター代表理事 岡村 民夫

一、受賞者あいさつ

一、閉式

記念講演

「文語詩のことならおそろしい」

宮沢賢治賞 信時 哲郎 様

「地球生命の未来圏」

イーハトーブ賞 毛利 衛 様

受賞のことば

信時 哲郎(宮沢賢治賞)

 この度は宮沢賢治賞という栄えある賞に選んでいただき、誠にありがとうございました。
 電話で連絡を受けた時、まずは驚き、そして畏れ、これはいただくわけにはいかない、と思いました。というのも、二〇一一年に宮沢賢治賞奨励賞を受賞しましたが、奨励賞受賞後に宮沢賢治賞を受賞した例はなく、その最初に私がなっていいのだろうかという思いと、輝かしい業績を残した方ばかりが受賞された賞を頂いていいのだろうかという二つの思いがよぎったためです。
 ただ、電話をしているうちに「いや、待てよ」という思いも頭を擡げてきました。「これは私への賞ではなく、文語詩研究に対する賞だったのではないか」という思いです。そう思えば、いただかないわけにはいきません! 文語詩研究の意義を認めてもらうことは、私たち文語詩研究者にとってこの上なく大切なことだと思うからです。
 「五十篇」「一百篇」に続いて、現在は「未定稿」の評釈を進めているところですが、先行研究も少なく、ますます文語詩を読むことの難しさを感じています。しかし、雹砲、動力脱穀機、女相撲と予想もつかないものが登場し、これまでに知られていなかった賢治が見えてくるのは、「難しいけれども楽しい」というのが率直なところです。文語詩を読むのが難しいのは事実ですが、これからは楽しさについてもお伝えしていきたい、と思います。

 

毛利 衛(イーハトーブ賞)

 地球を飛び出し、真空で生命が一瞬たりとも生きられない宇宙空間で、生命維持装置である宇宙船の窓から地球を眺めました。真っ暗闇の空間に太陽の光を浴びて神々しく輝く球体がそこにありました。じっと見ているうちに私は、確かに大きな地球が宇宙に浮かんでいること、そして地球自体がまるで一つの巨大な生命体であることに気づきました。
 ずっと一緒に宮沢賢治がそばにいて、この青く輝く水惑星をともに見ていてくれるような感覚を持ちました。四十億年もの間、水と大気で生命をはぐくみ多様化させ、今の私たち人類も一緒に生かしてくれている、奇跡の惑星、地球への感謝。
 一方、この地球環境が、現在、急速に変化していることは、宇宙からはっきりと見えますが、地上にいても、それを認識せざるを得ないほどひどくなりました。
 気候の温暖化や絶滅危惧生物種の増加、海洋のプラスチックごみなど、人間活動による悪影響は世界中で多くの人たちが実感しています。新型コロナウイルスの蔓延は四十億年続く生命の重みを軽視している人類に警告しているようです。百年ほど前スペイン風邪の世界流行で賢治はすでに同じ思いをしていた気がします。
 今回、イーハトーブ賞を受賞した私に、賢治がそっとささやいてくれました。「これからのお前のミッションは地球生命の未来圏のために働くことだ」と。

 

ものがたりグループ☆ポランの会(イーハトーブ賞奨励賞)

 ものがたりグループ☆ポランの会は「宮澤賢治の童話を語りたい」と二〇〇四年に産声を上げました。賢治さんのことも、花巻のことも何も知らない四人からのスタートでした。ゼロからのスタートだったため見るもの、聞くことすべてが新鮮でキラキラ光っていて、なんだかよくわからなかったけど「イーハトーブ」ということばの響きに憧れを感じていました。
 ポランの会は主に一人一話を語る「一人語り」と数人での「語り合わせ」で賢治童話と詩を上演しています。宮沢賢治の描いた情景や状況、紡がれたことばやリズムをそのまま伝えたいと句読点にも留意して表現していますが読めば読むほど、知れば知るほど表現することに戸惑いを感じるようになっていました。
 この度、最初に憧れたことばの響き「イーハトーブ」賞奨励賞を賜り、十七年前のドキドキ、ワクワクが蘇ってきました。そして、賢治さんから「いいんだよ」と言っていただけたようでスッと肩の力が抜けました。
 これからは変に気負わず、楽しく、表現し続けていきたいと思います。
 賢治さんのことばがたくさんの人に届きますように。

 

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宮沢賢治学会イーハトーブセンター功労賞 宮沢賢治賞・イーハトーブ賞

宮沢賢治賞・イーハトーブ賞、宮沢賢治学会イーハトーブセンター功労賞が、決定しました

 2021年度の第31回宮沢賢治賞・イーハトーブ賞と、第6回宮沢賢治学会イーハトーブセンター功労賞の受賞者が、次のように決定しました。
 賞の贈呈方法については、後日あらためてお知らせします。

宮沢賢治賞

信時 哲郎 氏

宮沢賢治の最晩年の「文語詩稿 一百篇」を一篇ごとに博捜を尽くした調査と偏りのない見地から評釈し、その成立事情を「文語詩稿 五十篇」との関係において推論した、『宮沢賢治「文語詩稿 一百篇」評釈』に対して。

【選考理由】
 本賞の信時哲郎氏は、日本近代文学の研究者で甲南女子大学教授。2010年に『宮沢賢治「文語詩稿 五十篇」評釈』を刊行し、翌年、宮沢賢治賞奨励賞を受賞した。2019年に2月に『宮沢賢治「文語詩稿 一百篇」評釈』を刊行し、今回の選考対象となった。前著と同様、「一百篇」の一篇ごとに語註・評釈・先行研究を記載し、そのいずれも博捜を尽くし、自説を押し付けることなく柔軟に評釈されている。巻末の終章では、それぞれの表紙に記された日付(一週間の間隔がある)から、これまで漠然と「五十篇」が定稿化された後に「一百篇」の定稿化が進められたと考えられてきたが、両「篇」中のいくつかに「対」の意識が見られることなどから、同時並行的に進められた可能性を指摘し、今後の研究に貴重な一石を投じた。本著は前著466頁をしのぐ766頁の大著であり、奨励賞を励みに研鑽を積んだ約10年の成果は賢治賞にふさわしい。

宮沢賢治賞奨励賞

該当者なし

イーハトーブ賞

毛利 衛 氏

少年時から宮沢賢治に触発され、スペースシャトルに二度乗り込み、日本科学未来館初代館長に就任し深海や南極基地での科学実験に参加し、『わたしの宮沢賢治』で宇宙観と地球観を統合しようとした営為に対して。

【選考理由】
 本賞の毛利衛氏は、1992年と2000年の二度、スペースシャトル・エンデバー号に乗り込み宇宙実験を行った。その後、2000年に日本科学未来館の初代館長に就任、2003年に「しんかい6500」に乗り込み深海での科学実験に参加、2007年に南極昭和基地で開設五十周年事業に参加した。2011年に刊行した『宇宙から学ぶ』では、それらの体験から「ユニバソロジ」(universe+logy)を提唱していたが、2021年1月に刊行した『わたしの宮沢賢治』では、「イーハトーブ」に触発されて宇宙観と地球間を統合する「地球まほろば」の思想へと深めている。そこには、宇宙に憧れる科学少年が「風の又三郎」に感銘を受け、やがて留学中に愛読を深め、最初の宇宙飛行の際、「生徒諸君に寄せる」を書き込んだ手帳を持ち込みくり返し読んでいた、といった軌跡も記されている。2016年12月には賢治祭特別企画として花巻市で講演している。こうした営為や賢治に寄せる思いは、イーハトーブ賞にふさわしい。

イーハトーブ賞奨励賞

ものがたりグループ☆ポランの会

宮沢賢治の童話作品を原文に忠実に物語る公演を東京や岩手県内で精力的に続けYouTubeでも発信し、『春と修羅』全詩の朗読をCD6枚にまとめた活動に対して。

【選考理由】
 奨励賞のものがたりグループ☆ポランの会は、2004年以来、賢治の童話作品を、原文に忠実に「一人語り」を中心に物語る活動を続けてきた。東京を拠点にしながら公演の様子をYouTubeで配信し、ナレーション講座やスタジオ実習のワークショップも開催している。一方、岩手県内でも精力的に公演し、2017年からイーハトーブ館でポラン寄席を開催している。2016年からは詩作品の語りにも取り組み、2021年3月に『春と修羅』全詩の朗読をCD6枚にまとめた。効果音を控え、朗読の技術は高く安定している。解説冊子では朗読テクストの校訂にまで踏み込んでいる。賢治作品を多様な媒体を通じて広く紹介していく活動はイーハトーブ賞奨励賞にふさわしい。


宮沢賢治学会イーハトーブセンター功労賞

佐々木 孝夫 氏

宮沢賢治に関わるSPレコードの復刻録音をCD5枚に収録し、未詳だった楽曲のモデルを発掘し、ブログも活用しながら、賢治が愛好した音楽を紹介してきた活動に対して。

【選考理由】
 佐々木孝夫氏は、仙台市で2006年からジャズバーを経営しながらSPレコードを収集してきた。2018年に店は閉じたが、2017年から2019年まで、賢治に関わるSPレコードの復刻録音を収録したCD5枚72曲を制作し、「セロ弾きのゴーシュ」中の「愉快な馬車屋」のモデルとみられる楽曲も発掘した。2021年3月には賢治が作詞あるいは作曲した歌や、「ポランの広場」に登場する楽曲を地元のミュージシャンが演奏・歌唱したCDを加えた。2019年1月からブログも始め、賢治に関わる音楽情報を発信している。賢治が愛好した楽曲を発掘しながら紹介してきた活動は宮沢賢治学会イーハトーブセンター功労賞にふさわしい。